「理想の保健室」を手放す勇気も必要

養護教諭という職務に就く多くの人が、「すべての子どもたちを笑顔で教室に送り出さなければ」「どんな悩みも解決できる頼りがいのある存在でいなければ」という高い理想を掲げる傾向にあります。
しかし、その「理想の保健室」のイメージがプレッシャーとなり、一生懸命働いているにもかかわらず、「今日も十分に対応できなかった」と減点方式で自身の業務を評価してしまうケースは決して少なくありません。

日々の業務に息苦しさを感じた時、重要になるのが「完璧主義」を手放す視点です。
保健室の本来の役割は、すべての問題を根本から即座に解決することだけにとどまりません。
子どもたちが「ここに来れば、とりあえずホッとできる」「先生の顔を見れば安心する」と感じられる安全な空間を提供すること自体が、すでに大きな教育的・心理的成果だといえます。
ただ話を聴くことに徹する日や、時には肩の力を抜いて子どもと自然体で笑い合えるような、余白のある保健室運営も非常に有効なアプローチです。

完璧を目指して数年でバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥ってしまうよりも、60点、70点の状態を許容し、細く長く子どもたちを迎え入れ続けることの方が、長期的にはずっと価値が高いとされています。
毎日保健室のドアを開け、傷ついた子どもたちを迎え入れているという事実そのものが、専門職としての立派な職責を果たしている証です。
「何もしてあげられなかった」と悩む日があったとしても、そこに大人が常駐し、受け入れる姿勢を示しているだけで救われている子どもは必ず存在します。
自身の成果を正当に評価し、無理のないペースで歩みを進めることこそが、持続可能な保健室づくりの鍵となるでしょう。